そろそろインフルエンザの流行が終わろうとしています。子供たちの学校では今季は昨年末と今月、学級閉鎖が続出しました。昨年末はA型、今月はB型が流行りだったそうです。言わずもがな感染症の成立は病原体、感染経路、宿主感受性によります。冬季は病原体の生息しやすい環境と宿主感受性の脆弱化が整ってしまうことに加え、寒気と低湿度によって飛沫の抵抗が少なくなることで感染経路としても流行に最適だとか…しかし、本来、感染症に感染すると原因の抗原に対して抗体ができ、感染を防ぐことができるはずですが、インフルエンザの抗原は毎年のように連続変異するため、繰り返し流行します。しかも、長らく信じられてきた予防法「うがい」も無効とされ、最近では予防法として舌みがきが流行りのようです。感染症の流行はこのくらいにして、流行りと聞いて一番に思い浮かぶのはファッションでしょうか?音楽のジャンル?言葉や食べ物にもあります。そして、看護業界にも…研究分野であれ、各看護領域の療養法であれ流行が存在します。
これらのように思考や意思を伴う流行は、病原体の流行と違って、特定の行動・思考様式が社会の中で受容され、急速に普及し、やがて消滅していく現象と定義されます。私は最近、この看護業界の流行に関心があります。流行の特徴として、以下の6つが挙げられるようです。1.何等かの意味において新しいもの、珍しいものが取り入れられる新奇性、2.発生してから終息するまでの期間が短い短命性3.流行が反復することがある周期性4.流行の対象以外に自由に選択できる複数の選択肢がある機能選択肢の存在。看護に存在する流行を考える場合、流行の特徴として挙げられる残りの2つが驚きなのです。5.何かの役に立つとか、一定の利益を生み出すかなどとは無関係であるという効用からの独立。6.人間生活の本質的な部分に関連することはほとんどない瑣末性さまつせい。看護において効用から独立すること、瑣末性があり得る??もちろん、この教科書的な特徴に看護をそのまま、あてはめてはいけないのでしょうが、効用からの独立はしばしば見受けられます。
身近で一番、影響力強いなぁと感じるのが看護提供方式です。今だとPNSを採用している施設が多く、私も決して否定派ではありません。でも、中にはパートナー決定のマッチングが十分に行えず見切り発車的にPNSを推し進め、現場から非難と不満の嵐を受けている施設もあるとか無いとか。これは確かに効用からの独立そのものです。これは、看護師が患者の問題には気づくし、患者の問題は探せるのに、自分自身の問題には気づかない,もしくは自己評価能力が乏しい傾向があるからではないでしょうか?さらに、大きな理由は問題の特定や評価が適切になされないままに「流行にのっかっちゃった」からではないでしょうか?
流行を採用する心理は、新しいものを求め、他者と異なる自分を顕示したいという欲求である異化と社会や他人から孤立したくないという適応と同調を求める欲求ある同化があり、この2つの相反する欲求を満たすために流行を取り入れるそうです。これらの欲求って確かに人間生活の本質的な部分には関連しないですね…でも、流行かどうかは結果論であって、新しいものが採用され、流行かなと思っていてもそのまま定着し、結果、流行とは言わないものもたくさんあります。新しいものを流行にするかしないかは採用者が自ら抱える問題の本質を解決するものとして採用するか否か、または効用を吟味しつつ採用するか否か、そして、採用による評価を継続的に行うか否かによるのではないかと思います。
そんなことを語りつつ、流行に乗り遅れないよう、春の新作衣装をお姉さんにすすめられるままにショッピングし、若い学生に教えてもらった流行歌を覚える小心者の私。流行を採用する側でなく、流行を作り出す側になりたいものです。