奈良学園大学・松浦純平さん
皆さま、こんにちは! 今月の5月1日からは新元号である「令和元年」が新たに始まりましたね。「令和」の出典となりました万葉集ゆかりの地が数多くあるここ古都奈良の地で「令和元年」を迎えることができますこと、日本看護研究学会近畿北陸地方会リレーブログに令和第一号として寄稿できますことを非常に嬉しく、光栄に感じております。
奈良時代の西暦730年(天平2年)、聖武天皇の皇后である光明皇后の発願により創設されたのが悲田院と施薬院です。悲田院、施薬院では、病人の治療、孤児の保護、諸国から献上された薬草を保管した東大寺の正倉院(世界遺産)から無料で貧民に施していたとの記録も残っています。また、光明皇后が自ら病人の「看護」を行ったとの伝承もあります。
私の勤務している奈良学園大学では、本学大学院教授であり、ナラティヴ・コミュニケーション研究所代表でもある心療内科医師の中川晶先生が中心となり定期的にナラティヴ研究会を開催しております。中川晶先生はロンドン大学キングズカレッジにてNBM(Narrative Based Medicine)の研究に取り組まれ、ナラティヴ・コミュニケーションについての国内の第一人者です。以下、中川晶先生からのメッセージです。
ナラティヴという言葉はいつの間にか様々の分野に浸透してきましたが、いまだに「理念は分かるがどのような実践がナラティヴなのか判然としない」という声があちこちで聞こえます。そのうちナラティヴは現場では使えないのではという声も出るようになり一時の勢いを失いつつあるようにも思えるこの頃です。しかし、逆に今だからこそ、我々はしっかりと臨床に根ざしたナラティヴ・アプローチを目指したいと思います。
我々が臨床と定義するのは日常医療現場だけではなく、ターミナルケア、癌告知、心理臨床、様々な福祉や介護現場やその他あらゆる人を直接援助する活動までを含みます。すでに英国ではNBMがEBMとともに医療の基盤として認められ始めています。本研究会は英国のNBMの研究・実践をする仲間とも連携を取りながら、我が国独特の文化的・社会的背景も視野に入れたナラティヴ・アプローチの研究・実践を進めていきます。現在、会員は40名ほどで、奈良学園大学登美ヶ丘キャンパスで、2ヶ月に1回研究会を開催しています。会員は様々で、医師、看護師、大学教員、臨床心理士、鍼灸師、保健師など多職種の方々が参加しています。
ぜひ、光明皇后が行った「看護」の息吹の地、また「令和」の出典となった万葉集ゆかりの地の“聖地巡礼”を兼ねて、新緑が美しい古都奈良の地へ訪ねて、ナラティヴ研究会で新しい視点からナラティヴ・アプローチについて一緒に考えてみませんか。
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