| 地方会トップ | ブログトップ | ヘルプ | ログイン | パスワード忘れ | 新規会員登録 | 利用規約 |
研究の「向こう側」2022/05/28(土) 11:56:16 RSSにてレス一覧を表示
福井県立大学 看護福祉学部  矢島 直樹さん
皆様こんにちは。今回リレーブログを担当させていただくことになりました、福井県立大学の矢島と申します。
皆様は作業のお供に何かを聞きながら作業するということはありますでしょうか。私は音楽のほか、動画サイトをラジオ代わりに流しながら作業することがあります。その時によく流している動画チャンネルが書籍になっており、その中で研究の「向こう側」の面白さを感じることがあったので、皆様と共有できればと思い書かせていただきます。
私は修士では手指衛生についての研究を行いました。手指衛生の研究をしたことがある方ならゼンメルワイスの名前はどこかで登場したことと思います。ゼンメルワイスは著書『産褥熱の病理』の中で、助産師が新生児を取り上げる第2病棟より、医師が取り上げる第1病棟の方が妊婦の産褥熱による死亡率が高いことに注目して、そこから手指の十分な洗浄と消毒(当時は塩素水)の徹底で第1病棟の産褥熱による死亡率を大きく下げることに成功しました。このことが現在に至るまでの手指衛生の必要性を語る上での歴史の転換点となったことは、多くの人に知られていることです。
一方で、偉大な事実を発見したゼンメルワイスのその後はというと、現在知られている功績からはとても考えられない人生を辿ります。病原菌の存在が発見されるより以前のため、当時の医学会には受け入れられず、勤務していた病院を追放され、自身の主張を繰り返すも聞き入れられず、失意のうちに敗血症で亡くなりました。死後に病原菌の存在が発見されたことでようやくその功績が認められることになりましたが、その人生は数奇な運命をたどったと言えるでしょう。
現在の私たちの知る事実や研究の「向こう側」には、その時々の社会背景や著者の物語があるということに思いを馳せると、日々目にする論文の向こうにあるそれぞれのドラマを感じられます。この本は著者の私見や考察が入っており科学的とは言えないかもしれませんが、新しい視点で物事を考えることができ、面白い体験ができました。
私はこの著者とは何ら関係がありませんので宣伝をしてもしょうがありませんが、興味を持たれた方はご一読ください(https://www.kadokawa.co.jp/product/322012000573/)。
投稿にはログインが必要です
トップページに戻る