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【2020新春特別号】これからの看護を担う実践者・教育研究者の方々へ2020/02/03(月) 10:20:40 RSSにてレス一覧を表示
武庫川女子大学看護学部 学部長・阿曽洋子さん
 全く初めて、ブログへの原稿を書きます。私が2020年3月末に現役を退くということを聞かれた大阪医科大学の真継先生からのご依頼がありまして、今までの教育経験を通しての現役の方々へのメッセージを送ることになりました。
 私の大雑把な経歴は、阪大医療技術短大を卒業後に保健師学校を卒業して、保健師で7年間勤務した頃に、恩師である氏家幸子先生からのお話をいただいて母校の助手(基礎看護学・地域看護学担当)になり、教員としての新たな出発になりました。以降、神戸市立看護短期大学、阪大保健学科、そして現大学の看護学部と大学院の創設と、看護教員として40年余り学部と大学院の教育に当たってきました。教員になったのは、元々は現場が好きでしたが、現場と教育の乖離が気になって、教育の実態を知りたかったのが大きな理由でした。3年後には現場復帰を想定していましたが、当時は年齢制限があり再就職は無理で、教育の世界に居続けることになってしまいました。ですから、研究は可能な限り臨床の看護師さんや保健師さんとの共同研究というスタイルをとっていました。基礎看護学の分野に入りましたことも、保健師時代に家庭訪問でご家族に介護方法を指導することが多く、この方法がなぜ良いのかという理由づけを理論的に説明ができなかったことからです。それで、看護方法について根拠を示した論文があるのかという疑問が起こりました。看護場面では、この患者にはこの援助方法が良さそうだと経験的に判断して実施していることが大半でした。経験的な看護を理論化できないか、というのが私の大きな命題になりました。「看護学」というには、学問としての根拠が必要です。そこで、私は「基礎看護技術」の援助項目の一つ一つについて実験を行い、援助の根拠(エビデンス)を探求していくことにしました。しかしながら、まだ道半ばです。看護の後輩の方々にお願いです。「看護学」を説明できるエビデンスを見出し、学問体系を完成させていただけたらと願っています。
 
 また、臨床の看護職の方にもお願いがあります。臨床実習で、学生から「なぜこの援助がこの患者さんによいのですか?」と質問されたときに、答えに詰まり、「そうね・・・。」とか、「以前からその援助をしているけど・・・?」と返事したことはありませんか。そんなときに、「説明が理路整然と言えない私は、看護のプロフェッショナルと言えるだろうか?」と自問自答し、落ち込んだことはありませんか。プロフェッショナルとは何か?プロとは、『専門的な仕事に従事し、その能力が高く、その仕事の技術に優れ、確かな仕事をする人』(ウイキペディア)です。私たちがプロと言われるためには、実施した看護が根拠(エビデンス)に基づくものであり、援助能力を発揮し、看護目標としての成果をだすことではないでしょうか。つまり、経験上有用と考えられる看護を積み重ねて理論化していくことが大事だということです。理論化するためには研究が必要になります。「看護研究は苦手」とよく聞きますが、臨床側と教育側とが共同研究する意味はここにあると思います。互いの能力を発揮して、互いに進化していくことで有機的なつながりができ、良い成果が生まれてくると思います。
 
 これからの看護を担う実践者と教育研究者の方々にお願いしたいことは、プロ集団として他分野の方から「看護学って、どのような学問ですか」という問いに、簡潔明瞭に説明できる学問体系を作ってもらうことです。期待しています。
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