当地方会独自で開催している学術集会についての情報を掲載いたします。
第20回日本看護研究学会九州・沖縄地方会学術集会を終えて
第20回日本看護研究学会九州・沖縄地方会
学術集会長 砂川 洋子
(琉球大学医学部保健学科教授)
第20回日本看護研究学会九州・沖縄地方会学術集会は、「実践知と研究知のHarmony& Empowerment」をメインテーマとし、平成27年11月21日(土)琉球大学医学部において開催させていただきました。今回は、第20回開催記念セレモニーとして、開会にあたり、沖縄県看護協会長仲座明美様、琉球大学大学院保健学研究科長福島卓也様の両名にご祝辞を頂きました。プログラムは、特別講演、ランチョンセミナー(テルモ株式会社共催)、研究助成発表、一般演題(口演23題、示説30題)に、新企画の交流集会「臨床と大学とのHarmonyによる(しなやかナースの育成)の取組」が加わり、おかげ様で九州沖縄の会員・非会員の190名余の皆様の参加を賜ることができ盛会裏に終了することができました。
さて、第20回を迎えた本学術集会の特別講演は、「看護の経験知と研究知をつなぐリフレクション」のテーマで、安酸史子先生(防衛医科大学校教授)にご講演頂きました。日々の看護実践と研究成果を統合調和(Harmony)させ、看護実践力や看護研究力としてさらにEmpowerさせるためのKeyは、日々の看護実践においてReflection in action(行為のなかの省察)や、Reflection on action(行為についての省察)を意識化し繰り返しトレーニングを積むことや、現場のなかで常にReflection in(on)actionが行える組織風土や看護師自身のレジリエンスが肝要であることなどが述べられました。看護師は、ケア実践において「なぜ」と思う自分自身のこだわりを大切にし、リフレクションを行うことが新たな経験知に繋がり、実践の中の知を探求するリフレクションが新たな研究知に繋がることを説明して頂きました。
総会においては、平成28年度地方会学術集会長として、宮崎県立大学 栗原保子先生の推薦があり、承認されました。また、次年度は、地方会役員の選挙があることが案内され、今後の詳細については、Webやニューズレターに広報していくことが説明されました。その他として、藤田会長より、九州・沖縄地方会研究助成(木場・田島基金)は、平成23年より4年間にわたり、木場富喜先生、田島桂子先生のご支援・配慮により研究助成(3件)が行われましたが、諸般の事情により平成27年度をもって終了することが報告されました。
ランチョンセミナーでは、友愛会南部病院笹良剛史先生に「緩和ケアにおけるエビデンス~がん患者・家族の痛みを癒す~」のテーマでご講演頂きました。がん患者の疼痛緩和における多種類の鎮痛薬の使用方法、痛みのアセスメントと副作用対策に加え、症状の評価は患者自身の評価がゴールドスタンダードであるとされ、がん患者の痛みを癒すケアは、トータルペインを緩和する視点から、日々のケアにおいて「つらくないか、症状はどうか、治療薬の効果はどうか」を尋ねアセスメントする看護師の役割が重要であることが述べられました。
交流集会では、九州沖縄大学間連携共同教育連携事業「臨床と大学とのHarmonyによる(しなやかナース育成の取組)についての発表がなされ、その後の意見交換では、新人看護師の離職要因への対応策や本事業の取組のひとつであるナーシンング・キャリアカフェが、学部学生のしなやかさ、レジリエンスの育成に有効であることなどの意見が挙がり、臨床現場のスペシャリストや卒業生の先輩ナースと学部生が交流するナーシングカフェ企画の意義が再確認できました。
研究助成発表では、久留米大学医学部看護学科加悦美恵氏の「仰臥位から側臥位への体位変換援助における看護者の姿勢と手の圧力の関連性の検討」の発表がなされました。その他、一般演題として口演23題、示説30題の発表があり、活発な意見交換が行われました。
学会運営やプログラム内容に関するアンケートでは、65名の回答が得られ、プログラム内容に関しては「概ね良かった」との回答が7~8割を占めており、運営に関する意見では、「同じ会場での示説発表は、今後検討したほうがよい」、「発表会場が多く、聴きたい発表が重なり聴けなかった」、「学会会場が遠くてわかりづらかった」なども寄せられました。次年度開催の参考にして頂けると幸いです。
最後になりましたが、ご多忙のなか、査読や座長をお引き受け頂きました先生方、ご参加頂きました皆様、本学術集会にご広告やご寄附の協賛支援を頂きました企業団体の皆様、企画・実行委員の皆様、運営にあたってご協力頂きました皆様、学生ボランティアの皆様に、心から感謝とお礼を申し上げます。
本学術集会が、20周年を新たなスタートとして、九州沖縄地区の看護学の発展と若い看護職者の研究力や高度実践力の育成に貢献できることを祈念し、無事終了できたことを心より感謝申し上げます。